「手折りめん」ができるまで


----「おいしく食べて健康に」。 食は、心と体の幸せの源。----
おいしゅうございます。
食生活ジャーナリスト

Asako Kishi
岸朝子さん


的確な料理批評、そして「おいしゅうございます」の言葉で知られる岸朝子さん。 「おいしく食べて健康に」がモットーといいます。 「食と健康」をテーマに、栄養の話、そばの楽しみなどについてうかがいました。

食べるって大切なことです。

---「おいしく食べて健康に」。やさしい言い回しの中に、奥深い意味を感じます。
 食べることって、大切なんです。 私はそのことを女子栄養学園(現・女 子栄養大学)の恩師である香川昇三先 生、香川綾先生に学びました。また家庭でも、両親から食べることの大切さを教えられて育ちました。これは今も、 私の「食」に対する考え方の根幹です。

---それで料理記者を目指された?
 いえ、いえ、卒業後は結婚して、 主婦をしていました。しかし戦争で家 も焼けて、何もなくなってしまった。 本当に大変な時期でした。料理記者になったのは、32 歳の時のこと。当時、主婦の友社が「料理が好きな家庭婦人」 を募集していたんですね。運よく採用 され、料理記者としてスタートしまし たが、実際は生活に困って働きに出た ようなもの。高邁な理想をもっていた わけじゃないんです。「食べることは大切だ」っていう信念だけで。その信念は今も、もち続けています。

そばは、国境を越えた健康食!

---仕事柄、さまざまな料理に接して こられていると思いますが、そばはよ く召し上がられますか?
 週に1回は食べますね。そばは 「打ち立て」「茹で立て」がいいとされ ますが、家庭で打ち立てはちょっと難しいでしょう。乾麺になります。 でも、そば屋のそばも、乾麺も、そばに変わりはありません。たっぷりのお湯で茹で、冷たい水にさらし、のびな いうちに食べるのが一番。刻みねぎや おろしわさびを薬味にします。青じそや茗荷、生姜、大根おろしなどをのせても、おいしいですね。

---栄養バランスも良さそうですね。
 そばは同じ植物性タンパク質でも、 主食であるお米に少ない、リジンとい うアミノ酸を多く含んでいます。アミ ノ酸は、皮膚や血液など、人間の体をつくるタンパク質を組み立てる大切な栄養素ですから、主食としても、そばは栄養バランスの優れた食品といえます。 また、そばには血管を丈夫にし、脳梗塞を防ぐルチンも含まれています。このルチンが溶けているのが、そば湯。 そば湯を飲むというのは、昔の人の知恵ですね。でも、そばつゆを全部飲む のは塩分の摂りすぎ。半分残すぐらい がちょうどいい。そば湯だけか、少しつゆを落として飲むか。

---そばは、栄養素も人間の知恵も詰 まった健康食。日本の文化ですね。
 穀類としては、海外でも食べられ ているんですよ。韓国の冷麺は、そばの澱粉が主成分。フランスにはそば粉を混ぜたクレープ、オーストリアにはそば掻きのような、だんごをシチューやスープに落とす料理があります。ロ シアにも、キャビアに添えるパンケーキ、ブリヌイにはそば粉を使ったものがあります。

---そばは国境を越えた食べ物なんだ。
 日本でも昔は、粒状のそば米で食 べていました。最近、再びそのヘルシ ーさが注目され、さまざまな料理に活 用されています。料理の鉄人でもフレ ンチの料理人が、付け合せにするなど 上手に使っていましたね。 そばは日本の伝統食。でも、伝統に固 執せず、新しい食べ方も取り入れながら後世に残していきたい食べ物ですね。

---最後に「食と 健康」の視点から、 読者にメッセージ をお願いします。
 食は命です。 生活習慣病=成人 病は、大人になれ ば皆がかかるわけ ではなく、生活習 慣の悪い 人がかか る病気です。せ めて40 、50 代からは栄養バランスを考 慮した食生活を送ってほしい。 とくにお勤めの人たちは外食が多くな りがち。塩分を控えることが大切です。 そして、意識して野菜や海草など食物 繊維を摂りましょう。田舎そばなどは、 全粉粒の食物繊維を普通のそばよりた くさん摂取できます。

---贅沢なものを食べなくてもいいと。
 そう。料理を食べて「おいしい」 と感じるのは幸せなことです。また、 一緒に食事をした人が喜べば、それも 幸せですよね。おいしく食べれば、「明日も楽しみ」って、前向きな気持ちにもなれます。食べることを大切にしてください。


岸朝子 PROFILE
●岸朝子(きし・あさこ) 1923 年、東京生まれ。
女子栄養学園(現・女子栄養大学)卒業。
55 年、主婦の友社に入社、料理記者に。
68 年より女子栄養大学出版部で『栄養と料理』編集長。
79 年「エディターズ」設立。料理や栄養の本を 企画・編集する。
93 年よりフジテレビ系「料理の鉄人」に審査員として出演。
テレビ、著作などで活躍。 著書に『岸朝子のおいしゅうございますね。』(KK ベ ストセラーズ)など多数。


●茗荷そば 初夏の香りをはこぶ茗荷で、冷がけそば。渋谷区の内山さん(57 歳/主婦) と大田区の中村さん(25 歳/OL )がチャレンジしました。岸朝子さんも 「茗荷は日本のハーブ。そばとの相性、栄養のバランスもよく、私も好きで す」と、オススメの“ぶっかけそば”です。

●材料/茗荷、大葉、茂野の「手折りそば」

●作り方/好みの量の茗荷を千切りに。大葉の千切りを加え、いったん水 にさらします。よく水をきって、冷がけの手折りそばにのせれば出来上が り。温そばで、より茗荷の香りを楽しむもよし。

■岸朝子著「岸朝子の太鼓判
(平凡社) 春夏秋冬、旬の食材を活かした「全国 うまいもの図鑑」。岸朝子さん、太鼓判 のホントにおいしい店ガイド。

季刊つるつる Vol.1
【インタビュー】 ■ 季刊つるつる総合目次へ
【"そばの豆知識"】 ■ 茂野オンラインショップ
【"手折りめん"ができるまで】
 お問い合わせ先:info1@shigeno.co.jp
Copyright 2001-2003 Shigeno Seimen, Inc. All rights reserved.