三遊亭金馬師匠 服部栄養専門学校中山篤先生がレッスン■夏のアイデア麺にチャレンジ


----そばは安直なのがいいね。 せこいってんじゃないよ。----

噺家
三遊亭金馬
師匠
さんゆうてい・きんば
落語といえば、そばにまつわる演目も多く、「ズズズーッ」とそばをすする仕草をイメージする人も多いはず。「どっちかっていうと、あたしゃ麺党だね」と、 あったかみある独特のしゃがれ声で語る金馬師匠に、落語とそばの話を伺いました。



噺家は自然とそば通にな

--落語では、そばが多く登場します。
金馬 代表的な演目に「時そば」があります。 そば屋の勘定を払うときに、銭を数えながら店員に時刻を訊くことで、勘定をごまかそとする噺。また「そば清」では、清さんという人物が大食いの賭けに負けるまいと、そば を食いまくる。で、苦しくなってきたときに、旅先でうわばみ(蛇の化け物)が人間を飲み込んだ後、草を舐めて膨らんでたお腹がへっこんでいった様子を見たことを思い出すんですな。これは消化薬だと思い込んだ清さん、この草を常時携帯しておった。さっそく取り出して飲んだのだが、実は人間の体を溶かす毒薬で--皆が気づいたときには、そばが着物を着てたっていう噺。 そばに関する噺は多いですね。でもね、関西にいくと、食習慣の違いかねえ、同じ噺で もうどんに変わるんですよ。

--噺家さんは、よくそばを食べに行かれるんですか。
金馬 噺家っていうのはね、高座に上がるときに、すきっ腹でもいけないし、満腹でも都 合が悪い。何か食べようっていうんで、ちょうどいいのが、そば。楽屋では「どこか旨いそば屋はあるかい?」「どこそこのそば屋が旨かったよ」なんて情報が飛び交ってます。また、そば屋も噺家をかわいがってくれるんですね。そうやって、自然と通(つう)になっていくんです。そばにちなんだ楽屋の隠語もあるんですよ。「(演目を)ちょっと時間を長めにやってくれ」なんていうときに、「麺台で頼みます」って言っ たりする。ほら、そばは麺台の上で伸ばすじゃないですか。あたしゃ、麺党でね。

--高座などで各地をまわられて、美味しい麺類にも出会われたのでは。
金馬 斑尾高原の近くに山菜料理の旨い店があって、そこのそばがいいんですね。やまごぼうの葉を干して粉にして、つなぎにしてるんです。あとね、初めてハワイに行ったとき、おもしろい麺を食べましたね。「サイミン」っていう、桜海老で出汁をとった醤油味のラーメンです。普通、麺は箸で取って食べるところを、向こうではレンゲに取って食べるんですね。今、ハワイでも見かけなくなったなあ。 --ご家庭では。 金馬あたしゃ、どっちかというと麺党でね。かみさんは、ご飯党。よく乾麺を茹でてもらって、食べますね。そばはさっと茹でて、冷水でキュッと締めてっていう手順があるでしょう。でも、かみさんはそんなのおかまいなし。こっちはやきもきするんだけど、家の料理はかみさんの領分でしょ。ちょっと我慢して(笑)、食べてます。

--どんなそばがお好みですか。
金馬 もりそばかな。そばは安直なのがいいですね。「せこい」ってんじゃないよ。よく 料亭なんかで豪華な器にそばがちょこっと載ってたりするのがあるけど、ああいうんじゃなくてね。 そうめんも好きですね。バターと明太子を混ぜて食べたり。あと思い出に残っているの が、子供の頃、母に作ってもらった煮麺にゅうめん。そうめんと茄子をつゆで一緒に煮て食べるんですね。あの味は忘れられないなあ。

食べ物はバランスが大事

--師匠は多趣味だそうですね。
金馬 油絵、写真、釣り、プラモデル作り、ゴルフ--。いろいろとやってますね。旅行 も好きで、昨年はかみさんと一緒に南極まで行ってきました。

--すごい。いろいろやってたほうが、健康にもいいのかもしれません。
金馬 でも一時期、太りすぎちゃってね。ある先生から1 日に9 品目を食べるようアドバイスを受けて、最近まで実行していました。肉、魚、野菜、貝、海草、卵、乳製品、油脂、豆ですね。不思議なことに、この9 品目を摂り続けていると、空腹になってもつらくなくなるんです。食べ物のバランスって大事なんだな、と改めて感じました。

--最後に、読者へメッセージを。
金馬 最近、落語のビデオやC D などがたくさん出てて、それを見たり聞いたりして通を自称する人が多いですね。もっと寄席などで生の落語にふれて、本物の通になっていただきたいですね。



PROFILE
●三遊亭金馬(さんゆうてい・きんば)
1 9 2 9 年、東京生まれ。41 年、三代目三遊亭金馬に入門。山遊亭 金時の前座名でデビューする。45 年、二ツ目で金時に改名、58 年に真打昇進。67 年、四代目三遊亭金馬を襲名。落語協会専務理事、日本演 芸家連合会理事長を務め、後進の育成にも力を注ぐ。油絵、写真、釣 りなど多趣味なことでも知られる。




そばの豆知識

そばは、 なぜ「のびる」?

「そばの延びたのと、人間の間が抜けたのは由来頼もしくもないもんだよ」とは、夏目漱石『我輩は猫である』の一節。 「そばがのびる」とは、元気に長く「伸びる」ことではなく、 「延長」の意味が強く、ダラダラした感じを表しています。人 が殴られて「延びる」という表現もあるように、「腰が立たな くなる」というニュアンスなのです。 科学的には、そば粉の85 〜90 %は澱粉で、残りは蛋白質。 この蛋白質が水に溶けて糊のようになり、“つなぎ”の役割を果たして麺を形作っています。つまり、水分が多いと糊がゆ るくなり、麺に締まりがなくなるのです。例えば、かけそば は麺がつゆに浸っているので、時間が経つとコシがなくなっ てしまう。もりそばも、そば自体に水分が多ければタンパク 質が流れ、その隙間から水分が進入し、奥まで溶かしてしま います。それを防ぐ意味で、そばを茹でた後に冷水で表面を締めているのです。

藤田和夫著「蕎麦なぜなぜ草紙」(ハート出版)より


季刊つるつる Vol.3
【インタビュー】 ■ 季刊つるつる総合目次へ
【夏のアイディア麺にチャレンジ】 ■ 茂野オンラインショップ
 お問い合わせ先:info1@shigeno.co.jp
Copyright 2001-2003 Shigeno Seimen, Inc. All rights reserved.