茂野「麺紀行」
第42回 吉田のうどん「べんけい」(山梨県富士吉田市)

三つ峠山の山頂直下の尾根から見る富士。
圧倒的な大きさで迫ってくる。
ここ5〜6年の間に様々なメディアに登場し、脚光を浴びている富士吉田の"うどん"。人口5万人の街にして"うどん屋さん"の数は60店舗以上だという。地元ではずっと昔から"うどん"が食べられてきたそうだ。今回はその富士吉田を訪れることにした。せっかくなので、富士山を、展望地として名高い三つ峠山から眺めるために午前7時には河口湖の湖岸にいた。三つ峠山は富士急の三つ峠から歩いて登るのがいわゆる一般的な登山ルートであるが、御坂トンネルまでクルマで標高を稼ぎ、そこから登る方法もある。もちろん圧倒的に後者のほうが楽であり、私もそうした。

しかし、楽と言っても、標高1800m以上の山への登りなので侮ってはならない。急激な天候の変化も考慮した装備も必要である。普段から多少の節制をしていないと、殆どが登る一方だけの登山なのでかなり厳しい。頂上までは個人差もあるが、約1時間半もあれば到達でき、驚嘆の声を発するくらいの距離で富士を拝める。今回は11月の中旬なので、登り口近辺では紅葉、頂上付近では冬枯れの風景が楽しめ、また、富士は既に雪の範囲を広げているので、コントラストが美しい。残念ながらやや霞みがかかっていた。でもまったく見えないこともあるので、贅沢は言わない。南アルプスもよく見えた。頂上で十分景色を楽しんで下山する。再び河口湖へ降り立ったのはちょうど12時頃。そこから富士吉田へはそれほど遠くはない。

河口湖から御坂トンネルへ向かう道(通称みさかみち)は、紅葉が綺麗だ。
三つ峠山から見る南アルプスの主峰。
右から北岳(日本第二の高峰)、間ノ岳、農鳥岳。
晩秋の様相を呈している河口湖。

途中少々渋滞する箇所もあったものの、富士吉田へ向かう道は割合空いていた。さて、これから"うどん屋さん"を探さなくてはならない。一応、現地に来るまでにはざっと予習をしておいたものの、偶然なる出会いを重んじたいので、具体的な店を決めていなかった。それに、あれほどメディアでたくさん露出しているほどだから、探さなくてもクルマで走っていれが目に留まるはずだと高を括っていた。ところが、都留市方面に向かって走っていたらいつの間にか郊外の田園風景になってしまった。引き返す前にコンビニに立ち寄り、聞いてみた。

すると、あることにはあるのだが、日曜日には殆ど休みなのだとか。そう、その日は日曜だったのである。しかも、やっていてもだいたい午後2時までの営業時間だそうだ。時刻は1時を回っていたので、簡単にお礼を言って、富士吉田の駅のほうへ戻ることにした。メインストリートだと思われる道路は"うどん屋"ばかりか、普通の店の殆どが閉まっていて閑散としていた。富士山へ向かって少し走ると"月江寺(げっこうじ)"という駅の標識があったので、その方向に右折した。富士急の小さな駅があった。駅員さんに「お薦めのうどん屋さんはありませんか?」と尋ねてみたところ、やはりコンビニと同様の答えが返ってきた。つまり、日曜も午後2時以降も開いている店はあまり無いそうだ。その代わり、"うどんマップ"をくれた。それを見て開いている店を探したらどうだろうということだ。

地図を見たら、確かに午後2時までという店が多いのだが、月江寺の駅から比較的近くに遅くまでやっている店を発見。それが"べんけい"だった。だんごなどの手作りの和菓子も店頭で売る割合小さな大衆食堂だ。メニューにはカレーライスやらヤキソバなどもある。本当にここで吉田のうどんが食べられるのか少々不安にはなったものの、ちゃんと「吉田のうどん」と書かれた幟(のぼり)が出ていた。私は迷わず"吉田のうどん"を注文する。普通のうどんもあり、例えば"きつねうどん"と"たぬきうどん"は400円で、"肉うどん"は500円。それから比べて"吉田のうどん"だけ700円と価格が突出している。そのわけはいわゆる"全部のせ"なんだそうだ。

店は創業50周年と書かれていたが、実際に店を切り盛りしているのは若い夫婦だったので、おそらく二代目なのだろう。とても愛想の良い奥さんだった。店の中には5人組のおそらく観光で来られた方々と、いかにも地元というご老人がいた。5人組の方々は私と同様"吉田のうどん"を注文していた。ご老人は熱燗を注文し、何かをツマミに一人で楽しそうに飲んでいた。通りは静かで外からは何も聞こえてこないのどかな日曜だった。

約20分ほど待って、私の席に"吉田のうどん"が運ばれてきた。"吉田のうどん"の特徴は、麺が太めで、コシが強く、野菜はキャベツを使う。馬肉が入っている。薬味は店のオリジナルのものが付いている。そういうことらしい。残念ながら同店では条件から2つ外れていた。まず、コシがそれほど強くなかった。もうひとつは馬肉ではなく豚肉だった。しかし、素朴な味で満足のゆくものだった。つゆはあっさりしていた。具がたっぷりあったので、大盛りにしなくてもそこそこお腹いっぱいになった。なんと、かき揚げまで入っていた。前述のように麺にコシは無いがその代わり、もっちっとした食感が美味しかった。

食べ終わって店を出たのは2時半頃。他の"うどん屋さん"も色々回ってみたかったものの、中途半端な時刻に満腹ときたものだから断念した。"べんけい”も含めて、幟の出ている"うどん屋さん”には半分のサイズのうどんもあるので、何軒かハシゴするときはそれを注文すべきだ。空腹時には店を探すことだけに専念していたので、メインストリートから大きくそびえる富士を改めて眺めてそこが富士山ろくだということを再確認した。

2009/11/27 Zaki


"べんけい"の外観。隣にも"うどん屋"がある。ショウケースの中には和菓子やいなり寿司が並んでいる。
ややねじれた麺。もちもちしている。味は素朴のひとこと。
"べんけい"のもうひとつの名物がこれ。いなり寿司。やや甘口。


べんけい
山梨県富士吉田市下吉田805
電話 :0555-22-2358


吉田のうどん 700円
かけうどん 300円
たぬきうどん 400円
きつねうどん 400円
カレーうどん 500円
肉うどん 500円
天ぷらうどん 700円
鍋焼きうどん 700円
吉田の冷やしうどん 700円
いなり寿司 2ケ 200円
お店ののホームページ:http://www.fujiyoshida.net/forms/info/info.aspx?info_id=2225
近辺の地図は上記URLに掲載されております。


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また、味などの感想についてはあくまでも旅行者の主観によるものです。




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